プログラム
13:00 – 13:05
部門長挨拶
原 隆浩
大阪大学大学院情報科学研究科・教授
13:05 – 14:00
基調講演
AIはなぜ電力を食うのか、生命はなぜ食わないのか
柳田 敏雄
大阪大学大学院情報科学研究科・特任教授
近年、人工知能(AI)は急速に進歩し、社会に大きな影響を与えている。その一方で、AIの学習や計算には原発に匹敵する規模の膨大な電力が必要とされ、エネルギー消費の増大が深刻な問題となっている。これとは対照的に、人間の脳は膨大な情報処理を、およそ20ワットという限られたエネルギーのもとで行い、さらに個々の細胞は、約6ギガビットに及ぶ遺伝情報の処理を、1兆分の数ワットという極微小なエネルギーで担っている。生命には、現在のコンピュータとは桁違いに効率のよい情報処理アルゴリズムが働いている可能性がある。近年、「マクスウェルの悪魔」が情報科学の分野で注目を集めている。悪魔は、ランダムな熱運動の中から都合のよい状態だけを選び出し、それを仕事へと変換する。この問題は100年以上にわたってパラドックスとして議論されてきたが、近年、情報とエネルギーの関係が明確になったことで理論的に整理され、現在では桁違いに省エネルギーな情報処理アルゴリズムの原型として捉えられている。本講演では、この悪魔の情報処理アルゴリズムが、生命現象の中で実際に働いていることを実験的に示す。筋肉を動かす分子モータを1分子ずつ観察した結果、分子モータは熱によるランダムな揺らぎ(ノイズ)の中から、数千分の1の確率で生じる有利な動きだけを選び取って前進し、力を生み出していることが分かった。生物は、ゆらぎ(ノイズ)を避けるのではなく、時間をかけてゆらぎの中で環境と相互作用し、まれに生じる意味のある情報を選び出しているのである。さらに、この分子レベルの仕組みが、階層を超えて、分子から細胞、さらには脳における「ひらめき」といった現象にまで共通して働いていることを示唆する研究についても紹介する。
14:00 – 14:30
報告1(知的DX研究領域)
人と人がつながるウェルビーイング社会
八木 康史
大阪大学D3センター・特任教授
コロナ禍により働き方や生活スタイルが大変革し,また,ChatGPT の出現によりAIがコミュニケーション相手となるなど,我々の暮らす社会は大きく変わりつつある。特に、これらの変化は、人と人のつながりの希薄化を生み出しているのかもしれない。本講演では、「人と人のつながり」に焦点を当て、2018 年度に文部科学省から受託したSociety 5.0 実現化研究拠点支援事業「ライフデザイン・イノベーション研究拠点(iLDi)」で推進する、3つのソルーションプロジェクトを紹介する。
14:30 – 15:00
報告2(知的DX研究領域)
時系列ビッグデータのためのリアルタイムAI技術
櫻井 保志
大阪大学産業科学研究所・教授
近年のIoTデバイスの急速な普及に伴い、それらのデバイスから多様かつ大量のデータが生成され続けており、増え続けるビッグデータを高速に学習、解析するAI技術が重要になっている。本講演では、様々な環境から得られたセンサ信号のリアルタイム高精度分析を行うことができる世界最速のAIソフトウェアを紹介し、実際の工場の生産ラインの支援に役立つ製造業DXなど、事業導入に関する取り組みを実例を交えて述べる。
15:30 – 16:00
報告3(産業DX研究領域)
社会の省資源・省エネルギー・循環経済実現に向けた産業のグリーントランスフォーメーション(GX)への挑戦
加納 敏行
大阪大学大学院情報科学研究科・招へい教授
持続的な社会の実現に向け、現在、省資源、省エネルギー、そして循環経済がさまざまな産業において重要課題となっている。本講演では大阪大学における産業のグリーントランスフォーメーションに向けた取り組み事例を紹介すると同時に、大阪大学が開発した不確実でかつ不安定な環境下においても少学習データ、超省電力で状態を認知・推定し、産業システムの準最適状態の維持を支援する人工知能「ゆらぎ学習」とその産業応用について紹介する。
16:00 – 16:30
報告4(都市DX研究領域)
合成人口データを用いたソサエタルデジタルツイン基盤の構築
村田 忠彦
大阪大学D3センター・教授
実社会のための社会シミュレーションを実現するには、地域に住む居住者の家族構成や行動データを含む社会の写像であるソサエタルデジタルツインが必要となる。本講演では、公開されている統計を用いた日本全国の家族構成の情報をもつ合成人口データの合成手法について解説する。また、合成人口データを用いたエージェントシミュレーションの事例として、投票シミュレーションやコロナ禍で内閣官房の主導で行われたCOVID-19感染シミュレーションなどを示し、実地域を対象としたマルチエージェントの社会シミュレーションの最新事例を紹介する。
16:30 – 17:00
報告5(健康DX研究領域)
北摂・豊能医療圏の歯科医療を変革する病診連携DX~かかりつけ歯科から大学歯科病院へスムーズにアクセス~
森本 愛子
大阪大学歯学部附属病院・特任事務職員
地域歯科医療における「分断」をDXで解消し、かかりつけ歯科診療所と大学歯科病院をシームレスにつなぐ新たな病診連携モデルの社会実装に挑む。本研究では、大阪大学近隣7市の歯科医師会のご協力のもと、200を超える歯科診療所にDENTAL IDを配布し、同歯学部附属病院の診療予約システムおよびAIサービスへ円滑にアクセス可能とする社会実験を実施したので、報告いたします。
